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2006年2月22日 (水)

『ラブストーリー(原題 :クラシック)』

『猟奇的な彼女』(感想はこちら)に端を発して、次々と韓国映画を中心に、正月休みを挟む約1か月間で20本くらい見てしまいました。総じて韓国映画はおもしろいものが多いというのが感想です。

今回は『ラブストーリー』について書きます。

クァク・ジェヨン監督の作品は、これで3本目。『僕の彼女を紹介します』、『猟奇的な彼女』、そしてこの『ラブストーリー』の順に見ました。 『猟奇的な彼女』についての感想は前回述べました。『僕の彼女を紹介します』はめずらしく劇場で見たのですが、始まってから20分もするともういらいらして席を立とうとしたことが再三でした。それでも、高い金を出した(笑)――1800円も払ったのだからと最後まで我慢して見ましたが、この監督のいちばん悪いところが出た映画だと思います。確かにところどころ美しい映像もあり、見ようによっては感動的なシーンもあるのでしょうが、ストーリー的に余りに支離滅裂、荒唐無稽に過ぎます。この映画は、単にクァク監督の撮りたい映像をつなげるために無理やりストーリーをくっつけたのではないかと言いたいほど、ある意味で監督におもねった作品だったのではないでしょうか。私がいちばん重視したい自然にその映画の世界に入り込めるかというポイントは、まるで無視された作品でした。まあ、辛うじて主人公のチョン・ジヒョンの演技力だけはそれなりに目立っておりましたが、それ以外は見るべきもののない駄作だったと思います。

おっと、今回は『ラブストーリー』のお話です。

さて、原題の『クラシック』のほうがはるかに響きといい、内容といい、ぴったりしていたのではないでしょうか。冒頭からパッヘルベルの「カノン」でしたし、ジュヒの高校の演奏会でもビバルディの「四季」やベートーベンの「悲愴」でした。何よりストーリー仕立てがまさに古典的でしたからなおさらです。

クァク監督のおもしろさは、時空間を自在に行き来するテーマを描くところにあるのではないかと思います。『猟奇的な彼女』では、それがUFOに乗ってやってくる未来人の物語として暗示されていましたし、この『ラブストーリー』では母と娘の二元中継的な恋物語によって、それが描写されています。果たして現在と過去はどこかで交点を結ぶのでしょうか?

ここからネタばれです。

冒頭でジヘ(ソン・イェジン)が母の初恋の思い出を記した日記や手紙を発見することからこの物語は始まります。この出だしはなかなかいい感じです。いかにも、これから物語が語られますよという心地よいイントロダクションです。そして、日記に挟まれた1枚の古い写真のクローズアップからストーリーに……、実にいい流れです。陳腐ですがとても安心感があります。

高校2年の夏休み、オ・ジュナ(チョ・スンウ)とソン・ジュヒ(ソン・イェジン二役)はそれぞれとある田舎にある親戚の家に遊びに来ました。ある日、ジュナが村の少年たちと一緒に遊んでいるときに、2人は初めて出会います。そして、村の川向こうにあるお化け屋敷と呼ばれる古い建物に一緒に訪れることから、この映画の一組目の物語はスタートします。とても自然です。しかも、ところどころに恐怖を誘うものあり、笑いあり、すがすがしさ、ほほ笑ましさありと、おそらくはだれにでもあったであろう思春期の美しい1ページを思い出させてくれます。そして、圧巻は古びた木の橋のたもとでホタルとたわむれる2人の情景でしょう。これは、実にきれいです。もうクラシックな恋物語としては、これ以上ないぐらいに見事な幻想的シーンでした。そしてこの後、この映画にとって非常に重要なアイテムとなる「ネックレス」が、ジュヒからお礼の品としてジュナに渡されます。

さて、現代に戻ってジュヒの娘ジヘの物語――二組目の物語が始まります。恋物語の輪唱というかフーガというか、はたまた連弾というべきか。それはともかく、現代と36年前とを往復することがここで宣言されます。観客としては、なるほど、そういうことね、と理解も早いです。

ジヘは、ラブレターならぬラブ・メールの代筆を頼まれて知り合うことになったサンミン先輩に好意を寄せています。しかし、ラブ・メールの依頼人である友達スギョンに遠慮もあって、なかなか近づけません。ところが、どうも肝心のサンミンはジヘに好意を抱いているらしいのです。それがサンミンの表情から、我々観客にだけわかるように撮られます。そして、いろいろあって……。

このように展開していくので、ストーリーにどんどん引き込まれていきます。

ここで、また昔に戻ります。ジュナの友人テスが登場。親の取り決めでジュヒはテスの許嫁となったため、ジュヒとジュナ、そしてテスの三角関係がここでめでたく成立(笑)。そして、これまた古典的な、2人の間に立ちながら悩み揺れ動く女心……、とこのように書いてくるだけで冷や汗が出てくるくらいわかりやすいストーリーですね(^^;)。

さらにいろいろな出来事があり……。キリがないのでここでちょっとアクセルを踏み、唐突ながらフィナーレ近くに飛ぶことにします。

ベトナム戦争帰りのジュナとジュヒが喫茶店で再会するシーン。これがやはり後半の見どころの一つと言えそうです。戦争で盲目となったジュナが、それこそ命をかけて守ったネックレスをジュヒに返そうとする場面があります。ここではさすがに熱いものがこみあげてきました。とくに、ジュナがジュヒの顔をなでるところ、愛するジュヒの顔をその手のひらでしか確認できない姿は、やはり涙なしには見られないところです。

さて、現代のジヘの恋はどうなったでしょう。

ある日、ジヘは偶然の通り雨で大きな木の下で雨宿りをしています(ここで気づきましたが「偶然」とか「大きな木の下」ってクァク監督は好きなんですねえ)。すると、やはり傘を持たないサンミンが”偶然”にもジヘの雨宿りしている木の下に入ってきます。2人きりになって、どぎまぎするジヘ。彼女は、とっさに雨の中を飛び出そうとします。が、サンミンに呼びとめられます、「どこへ行くの?」。

結局、一緒に図書館まで彼の上着を傘にして送ってもらうのですが、ジヘの弾む気持ちが、道にはじく雨だれのようすや、2人の足の動きによくあらわれていて、これもまた印象的で美しいシーンの一つとなりました。

さて、忙しいですがここで過去にもどりましょう。ジュナは、ジュヒとの再会の喫茶店で、実は自分はもう結婚した、と告白します。ジュヒは驚きますが、その場を取り繕うために、聞いて知っていたわ、とうそをつきます。やがて彼女はテスと結婚するのですが、3年後にジヘを産むことになります。

                  ・・・・・・・・・・・・・・・・

ところが、ジュナは実は結婚してなかったのです。

そのことが、ジュナの死んだのちにわかります。それは、遺言によって彼の所持品の一部をジュヒに渡しにやって来たジュナの友人たちから知らされるのです。この辺は、ちょっと不自然さがないでもないのですが、まあ許される範囲でしょう。いずれにしろジュヒは彼の死を聞き、泣き崩れます。傍らには幼いジヘがいて、その様子をじっと見ています。それは、ジュナとジュヒの2人にとって思い出深いあのホタルとたわむれた川のほとりでの出来事でした。

さあ、いよいよ大団円です。

現代のジヘです。図書館へ送ってくれたあの日のサンミンについて、ひょんなきっかけからある事実を知ることになります。実はあの日、サンミンは傘をほんとは持っていたのです。それなのに、傘を持たずにサンミンが雨宿りしにあの木の下にやって来たのは、ジヘに近づく口実のためだったことを知るにいたります。サンミンの本当の気持ち――実は彼が好意を抱いていたのはスギョンではなくジヘであったことにジヘは気づきました。そして、それがそのとおりであることをサンミンに告白されたのです。めでたし、めでたし。

しかし、クァク監督は、このままでは終わらせないんですねえ。どうも、この監督は最後にどんでん返しというか、意外な展開を持ってくるのが大好きのようです。まあ、それも魅力には違いないんですけど(映画好きの方なら、とっくに気づいているのかもしれませんが)。

ジヘとサンミンは、ジュナとジュヒの思い出の川のほとりを散歩しています。そして、ジヘは、日記で知った母の初恋物語をサンミンに聞かせたようです。それは、あのネックレスの件も含めて。そういう母の思い出の川なのだ、ということをサンミンに語り聞かせたのでしょう。

ラストシーン。話を聞き終えたサンミンは、なぜか鼻をぐすぐす言わせています。どうやら少し泣いているようです。――えーっ? いくら好意を寄せた女性の話に合わせるにしても、随分とおかしいんじゃない? 大の男が、好きな彼女の母親の初恋話を聞いて泣きますか? まず、あり得ません。では、なぜサンミンはうっすらと涙したのか。

それが、次のシーンではっきりします。

サンミンは、自分の首もとから静かにネックレスを外し、それをジヘに差し出したのです。そう! オ・ジュナがベトナムで盲目にまでなりながら守り抜いたあのネックレスです。

「えっ、うっそー! なんじゃこれっ、ちょっとできすぎじゃないの!」

と思いつつも、ぞくっとしてしまいました。そのネックレスをジヘの首にかけると、あの36年前と同じ木の橋のたもとにジヘとサンミンはいます。そして、ホタルとたわむれ……。

いやあ、きれいな映画でした。感想を述べるつもりがすっかりあらすじになってしまいましたが、振り返って述べているところがおおむね私の気に入った場面ということでお許しを。

この映画を見てから、ソン・イェジンを大きく意識するようになりました。チョン・ジヒョンとはまた違った意味でのうまさを持った女優さんですね。オ・ジュナ役のチョ・スンウも印象的でしたし、テス役の役者――よく転ぶ(笑)――もそれぞれいい味を出していたように思います。

さて、最後にこの映画でわからないことが2つあります。

一つは、冒頭の場面でジュヒが読み始めた日記は誰の日記なのでしょうか。

最初は私も普通に母・ジュヒの日記かと思っていました。しかし、最後まで観ると、オ・ジュナは死んだのちにジュヒに遺言で箱を渡します。どうもその箱は、ジヘが押し入れから見つけた母の思い出の箱のようにも思われます。つづられる物語は母の日記によるものだと思っていたのですが、ひょっとしたらジュナの日記内容が含まれる可能性もあるのではないでしょうか。つまりジュヒとの恋心をつづったジュナの若いころの日記ということです。でないと、ジュナとテスとのやりとり――男同士のやりとりを、あそこまで詳しく描けないのではないかと。オ・ジュナの遺品はネックレスと思ったのですが、そうではなかったわけです。それでは、何をジュナはあの箱に入れたのでしょうか。私には謎です。

もう一つは、監督のコメンタリーを聞いていたら、テスが最初にラブレターの代筆をジュナに頼むとき、ひょっとするとジュナの首にかかっていたネックレス――これは、テスの父親がジュヒに贈ったものですが、それに気づいていた可能性を否定しないと語っていました。そういう見方が可能なのかどうか。

ただ確かにジュナが思い切って、テスに「俺をなぐれ、俺はおまえの許嫁のジュヒとひそかに交際していて、このネックレスは彼女からもらったんだ」と白状したとき、テスは背中を見せたまま「そのネックレスはやばい。なぜなら、父親がジュヒさんに贈ったものだから」と言っています。つまり、振り返りもせず、オ・ジュナのネックレスを確認もせずにこう言ったのですから、もうジュナのネックレスには気づいていたというふうに理解できます。果たして、テスはいつジュナのネックレスに気づいたのか、これも謎です。

皆さんはどう考えられましたか。

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