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2010年2月16日 (火)

NHK『青春リアル』2月13日りんりんトピック

最近NHKの『青春リアル』をおもしろくみています。

この番組を知ったのはおそらく昨年の半ばくらい。たまたまチャンネルを回していたらなかなかおもしろそうだったので、ときどき観るようになっていました。そして、今回の第3期シリーズは毎回録画してみています。

先日2月13日(土)の回は助産師の"りんりん"がトピ主でそのトピックは「おなかの子に“障害”があるかもしれないと言われたら、どうしますか?」でした。

個性豊かな12人のそれぞれの投稿をもとに構成されるという異色な番組ですが、メールや掲示板がコミュニケーションツールとして定着したからこそできる企画です。ただしこれに参加するには、文章作成能力(いわゆる文章がうまい・下手とはまた違って、むしろ言いたいことをとにかく文章にする力、ふだん遣いの話し言葉をそのまま書くので十分なのですが、これは実際問題かなりしんどい作業でしょう。腕力も必要です)がかなり要求されそうです。

それはともかくいつも感心するのは、NHKの「番組としての構成力」です。メンバーのそれぞれの書き込みをきちんと咀嚼(そしゃく)して、語られつつある現在のポイントをきちんと押さえて番組として観られるものに仕立ててしまっていることにです。NHKのウェブサイトに設けられた掲示板でメンバー各人の投稿をナマで読むこともできるので、それらの投稿をどのように料理したのか、その手並みのほどがわかります。

さて今回のりんりんトピックはこの第3期でも観点の豊富さやまとめ方の点で珠玉の出来となっていたように感じました。とくに「障害児を産むか産まないか」などという大きな問題の番組の締めをどうするつもりかと注目していたのですが、ジム経営者・ゴンチャの母親――知的障害者のケアをして20年の経験を持つベテラン――の言葉で余韻を残すように終わっていたのはある意味NHK的ともいえますが、なかなかうまくまとめたなぁ、の一言です。

12人の投稿が読める掲示板では、りんりんのトピック自体がどういう方向性をもって議論していこうとしたのか、いまひとつりんりんから明確に説明されていなかったのですが――むしろそのためにいろいろな意見が総花的に出ることになり結果としてそれがよかったようにも思います――、それはともかく各人一人ひとりの思いがつづられるなかで、「障害とは何か、生まれる子にとっての幸せとは何か」が正面切って議論される流れになっていました。そして後半ではニカの過去の生活とも絡み白熱の展開となっていきます(ニカはこれまでに明かされた以上にいろいろな経験を持った女性のようです)。

もう本当にこんな真剣でまともな議論のやりとりを聞いたのはウン十年ぶりでしたから久々に新鮮なショックを受けたものです。

それにしても真剣に話し合うことによって、人はどんどん変わっていくんですね。とくにこの年代では、という補足は必要かもしれませんけど。掲示板を読むとそれらの様子が手に取るように感じられて、やはり人は話し合うことがとても大切なんだなぁ、と改めて感じさせられました。

そして、併せてこの番組のトピ主はとても大変だということ。1対11で突っ込まれますから、本当に丸裸の自分をさらけ出さざるを得ません。ちょっとでも甘い虚飾やごまかしが見えたりするとすぐに叩かれます。メンバー各人、自分からすすんで参加したはずですがやはりトピ主の番に来ることを怖がっています(笑)。

今回のりんりんの回はそうでもなかったのですが、これまでの何人かのトピックで目立った傾向は、トピ主がトピックを立てた際自分では既に十分に検討済みで分かっていたつもりの前提や解釈に大きな破綻・欠如があって、みんなから叩かれ、そこで改めてそのことに気づいて一定の成果をみて終了というパターンでしょうか。

ところが今回のりんりんトピックでは、障害ということがテーマの大きな位置を占めるため聴覚障害者"はちきん"のトピックともかぶる面もありましたし、ベトナム人"フォー"の日本における外国人差別問題も、国籍が違うことによる”障害”として見られないこともない。そのうえ、障害とは何か、について考えを突き詰めると人間の相対的な「劣性」というところにまで行き当たり、肉体的な劣性――例えば走るのが遅い、アトピーがある、などといったことにまで敷衍して、自分自身のそういった劣性を自覚したメンバーからはいわば(中絶される)当事者としての意見も続出したりしたため、大いに議論は盛り上がっていったようです。

ところで町長がいるのですが、今回は途中で1970年頃の「不幸な子供を生まないための運動」を紹介していました。この発言はかなりポイントの高い発言となり、その後の議論の一つの方向性に道をつけたように思います。こういう発言が町長の真骨頂でしょうか。社会学者としての博識から今なされている議論に適切な”素材”を投げ込んでいく、そういう役割が町長としていちばんふさわしいように思います。

今回の議論は、もちろん結論の出るようなものでないため、ややもすると不毛なものになりがちなのですが、これがなかなか生き生きとした展開が続き非常に引き込まれる意見がたくさんありました。上に述べた人間の劣性=障害の可能性や、フォーの言った環境の問題――これは福祉の世界では今や大原則になっているデンマークのバンク・ミッケルセンが提唱した「ノーマライゼーション」と同じ趣旨でしょう――がかなり大きな比重を持っているのではないかなどです。

そして、議論が続くいま現在だからこそ今回の番組の最後として語られたゴンチャの母の言葉が、また別の次元にあるにしても余韻をもってわれわれにヒントを投げかけてくれます。とくに最後の一言には人に対する深い愛を感じたのですが、これは私だけでないでしょう。

《実際のところ母によると、「障害」を持った子供と共にたくさんの困難を乗り越えた親御さんは、やっぱりすごく強くて魅力的な人柄の人が多いらしい。そして最初から誰しも強い訳じゃなくて、「死にたい」と思うような事もあって、それを乗り越えながら徐々に強くなるって。始めから強くなくても良いって。》(ゴンチャの投稿より)

追記(3月1日)

2月27日の番組の最後にりんりんトピックについての「皆さんのご意見」というのが紹介されていました。早速、NHK「青春リアル」ウェブサイトに飛んで確認してきましたが、ここでこのブログ記事の最後として追記しておきます。

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「皆さんのご意見」199件目「選択肢」を提供するべきではない     
                             投稿者: [匿名希望 神奈川県・40代]

ダウン症の子を持つ母です。

妊娠中、障害の可能性を考え、羊水検査をするかどうか考えましたが、しませんでした。

検査をして障害があるとわかったら中絶したいと思ってしまうでしょう。だけど、生まれてきたい命を殺してはいけないと思ったからです。

なのに、ダウン症だといわれたときは、どうしてあのとき検査をして中絶しなかったかと悔やみました。

子どものことより、自分が可哀想でした。二年ぐらい苦しかった。

今、子どもは三歳です。あのとき中絶しなくて本当に良かったと心から思います。

自分のことばっかり考えていた自分が恥ずかしい。子どもは私にいろんなことを教えてくれます。一番でなくても、お金いっぱいなくても、幸せになれるよって笑顔で手をひいて、知らない世界を見せてくれました。

毎日とても楽しく、充実しています。

上の娘が 4 歳のときに言った不思議な言葉を思い出します。

「お空で約束してきたの。わたしがいっぱいいろんなことができるから、僕のお姉ちゃんになって、って頼まれた。いいよって言って、先に来たんだよ。」

ひょっとして、自分も子どもと約束してきたんじゃないかって思います。

でも、羊水検査をしていたら、あのときの私は未知の世界に飛び込む勇気が出なかったのではないか。

だから、「選択肢」を見せて欲しくない!というのが本音です。

                ********************************

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